サイトの方にあります伊出松「時の旅人」
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に至るまでの経緯テキストを投下~☆
お題:「プレゼント」
毎日が、ただ漠然と過ぎていく。
喪失感と隣り合わせの毎日。
変化のない日々。
それは、突然だった。
僕宛に届いた、小さな郵便物。
封筒を裏返してみても、名前はない。
手紙にしてはふくらみがあって、
僕は怪訝な顔をしてそれを手の平に受け止め、重みを量る。
何だろう…?
その重みは、何だか、僕の心にのしかかるようで、
ためいきをついた。
封筒の端を千切り、ひっくり返してみた。
冷たい金属が、手の平に落ち、直ぐに僕の熱を吸って、
同じ温度になった。
ちゃりと音を立てる。
「鍵」
どこの鍵かはわからない。
そしてこれを送った人もわからない。
なのに、僕は、思ってしまう。
「…竜崎なんですか?」
連なる、鍵。
ふたつとも形が違っていた。
僕は部屋で、その鍵を見つめた。
そのまま、朝を迎える。
その日、捜査があったのだけど、気になって仕方なくて、
抜け出して、公園でまた、その鍵を見つめた。
何でもないかも、知れない。
でも、何でもなかったことにしたくない。
何でもなかったことにしたばかりに、
僕はこんなになってしまったんだから。
何だって良い、何だって良いんだ。
きっかけさえあれば。
僕は、それを自分から見いだせない。
これは、それを見抜くようだった。
もう居ない、あの人が僕にこんなものを送れるはずがなかった。
だけど、僕は、そう思いたかった。
その鍵は僕の誕生日に届いた。
それが、偶然でも、いい。
導かれるままに。
何気なく封筒の中を覗いてみると、文字が見えた。
荒くシャープな文字に、震える。
「HAPPYBIRTHDAY」流れるような筆記体。
間違いない。
渡されず、届かないまま、何年もこれはさまよったんだろうか。
それとも、竜崎は、どこかで。
僕は思わず、
「…今頃、今更ですよ」と、呟いた。
遠くで、竜崎が笑って、る。
届かない手紙はありません。
いつか、あなたは気付きますから。
「…」
頷く竜崎は、慈しむように僕を見て、消えた。
「竜崎、待っていてください」
そう決めた途端、身体が軽くなった。
手の平の鍵を見つめると、きらりと輝いてる。
それを握りしめる。
「…ありがとう」
いつも、いつだって。
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