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お題:「ため息」
「よくできました。」
そう言って竜崎は僕のあたまをくしゃっと撫でる。
子供の使いか?
あんまりとぼけた言い方だったり、
たいしたことない仕事をしたあとのタイミングで、
そういうことをされるので、
ついムッとしてしまう。
バカにされてるのか?
なんなんですか。全くもう。
こないだなんて相沢さんや局長のいる前で。
恥ずかしいったらありゃしない。
年齢不詳の竜崎。
10代かも30代かもわからない、男とも女ともいっそ人間ともわからない不思
議な顔立ち。
だけどどうも彼は僕より年下なんじゃないかという気がしてる。
別にだからといって僕のプライドがどうこうという話ではなくて、
他のみんなからそんな扱いを受けてる僕がどう見えるのかって思うのは仕方ない
じゃないか。
どうして僕に限ってそんなにからかうんですか。
簡単な仕事をした時にだけ「よくできました」だなんて。
複雑な仕事はできないくせにっていうあてつけじゃないのか。
お願いだからヤメてください。
ある日珍しく僕に難易度の高い仕事が回ってきた。
ワタリさんが新しく開発したシステムの本庁での初期動作の留意点確認と設定。
これ、多分本当は模木さんに任せたかったんじゃないかと思う。
でも模木さんも他のみんなも手いっぱいで、それで比較的暇な僕に回ってきたの
だ。
僕なんかテストケースくらいにしか考えてないのかもしれないけど、僕だってこ
う見えてもちゃんと大学出てるんですよ。
いつだって失敗してばかりじゃないんですよ。
半日後、
しっかり結果をまとめて鼻高々の僕に竜崎はあっさりと「問題ないようですね」
とだけつぶやいた。
ははあ。なんですかそれ。
いつも「よくできました」とか言われてる仕事よりずっとがんばったんですけど
。
僕が失敗しないとつまんないとか言わないですよね。
「今日はイイ子イイ子はなしですかぁ?」
冗談で、若干の嫌味も混ぜて、そう言ってみた。
竜崎は目をぱちくりしてから「子供ですかあなた」と言った。
僕はショックを受けた。
今までのこと棚にあげて子供扱いを受けたのがショックだったわけじゃない。
もちろん、竜崎に頭を撫でてもらえなかったのがショックだったわけでもない。
イイ子イイ子はなしですかなんて
完全に冗談で言ったはずだったのに
竜崎に誉めてもらえないことにがっかりしている自分にショックを受けたのだっ
た。
なんたること。
思わず棒立ちになる僕に、竜崎はすれ違いざまに僕の後ろ頭を撓めるようにくし
ゃりと押し撫で、
「しょうがない子ですね」と言って部屋を出て行った。
あーあ。
ため息をついて竜崎の出て行ったドアを見つめる。
こんな扱い受けてやっぱり喜んでるなんて。
僕はどっかおかしくなったんだ。
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