「待ち合わせ」
お題にあらず、でも、文章に、色んなお題をちりばめました☆(笑)
気付けば、しんとしている。
私はこの空気が、一番落ち着いた。
部屋の真ん中にある2人掛けのソファ。
そこへ足が赴く。
同じ部屋にいたのはわかっていたが、
松田は、ソファで眠りこけているようだ…
落ちないように外側に背を向けていた。
肘掛けを枕がわりにして。
勤務時間外なのは百も承知だが、思わず、
イラッとして、その背中を蹴りたくなった。
足を上げた瞬間、くるりと寝返りをうった。
起きていたのかと、足を引っ込め見てみると、
にやにやと笑った顔で、寝息を立てている。
「…馬鹿」
つんつんと、頬をつついてみたが、反応はない。
ソファから外れてしまった片足を触ってみる。
鈍い。
寝てしまえば、こいつは何をしようが、大概起きたことがない。
私は、すとんと、ソファの前に座った。
松田が背もたれだ。
ここは、松田と、私の待ち合わせ場所だった。
いつもここで、落ち合って、先を決める。
決めたわけではない、が、そうなっていた。
じんわり背中に松田の体温を感じる。
俯いたときに視界に入ったネクタイに指を絡ませてくるくる遊んだ。
ここで思いきり引っ張れば、さすがに起きるだろう。
いや、…このまま、寝顔を見るとしよう。
寄り添うことに抵抗、がないのは
この男が、初めてかも知れない。
その証拠に自然と、
足はここに向く。
松田が居ないときは、ここで、こいつを思って、
及んだこともある。
私らしくないことばかり、松田はさせてしまう。
「…ふふっ」
自嘲する。
松田はもぞ、と身じろぎした後、転がって、私にのしかかってきた。
「~~~、馬、鹿」
それを背中と肩で、押し返すと、
だらりと松田の手がソファアから外れた。
その手にそろりと、自らの手を重ねて、きゅっと握る。
しばらくそうした後、手を離すと、松田の体温を吸った手に熱さを覚えた。
そのまま、その手を、下へと滑らせる。
熱の帯びた手を、潜り込ませて、
辿り着いた部分にすり込むようにした。
びくりと身体が、動く。
はあ、
溜めた吐息を吐きだして、その熱を味わう。
は、
松田の熱は、私に、まわりやすい。
今の私を、見たら、松田はどう思うのか。
…それとも、煽るのだろうか。
静かに吐息を立てる、松田を憎く思うと同時に、安堵する。
そのまま、私は果てた。
荒い息を吐きながら、そっと近づいてキスをする。
松田さん、好きです。
と、胸の内で、呟いて。
そして、その場を立ち去った。
「おやすみなさい」
部屋から、竜崎が居なくなって、しんとした時に、
僕はソファで両手で口を塞ぎながら、
言葉にならない言葉を必死でこらえながら、
のたうちまわっていた。
…竜崎が手を重ねたときから、僕は起きていた。
手が離れたとき、
そのまま、抱きつこうと思った、その瞬間。
僕は固まってしまった。
寝たふりをして、竜崎を見守った。
痛いほど、伝わる、竜崎の…気持ち。
戸惑ったり、混乱したり、なんだ。
何度か、身体を合わせていたけど、心が通ったと思ったことは実はなくて、
たった今、それを、してしまったような気がした。
竜崎は、それを知らない。
僕は、ソファで悶えながら、
次の待ち合わせを、心待ちに思った。
かっかする頭の中で、手を引いて、それで…と、シュミレートする。
次も、寝たふりして、待ってよう。
…そう、僕は、ずるい。
でも、それは、竜崎にかなわない僕の、唯一の手だてなんだ。
…この待ち合わせだってそうだ。
お互いがお互いを思わなければ、待ち合わせることなんてない。
…竜崎、次は、
僕の気持ち、伝えていいですか?
サイトの方にあります伊出松「時の旅人」
www6.ocn.ne.jp/~k.sakaki/deathnote.text19.html
に至るまでの経緯テキストを投下~☆
お題:「プレゼント」
毎日が、ただ漠然と過ぎていく。
喪失感と隣り合わせの毎日。
変化のない日々。
それは、突然だった。
僕宛に届いた、小さな郵便物。
封筒を裏返してみても、名前はない。
手紙にしてはふくらみがあって、
僕は怪訝な顔をしてそれを手の平に受け止め、重みを量る。
何だろう…?
その重みは、何だか、僕の心にのしかかるようで、
ためいきをついた。
封筒の端を千切り、ひっくり返してみた。
冷たい金属が、手の平に落ち、直ぐに僕の熱を吸って、
同じ温度になった。
ちゃりと音を立てる。
「鍵」
どこの鍵かはわからない。
そしてこれを送った人もわからない。
なのに、僕は、思ってしまう。
「…竜崎なんですか?」
連なる、鍵。
ふたつとも形が違っていた。
僕は部屋で、その鍵を見つめた。
そのまま、朝を迎える。
その日、捜査があったのだけど、気になって仕方なくて、
抜け出して、公園でまた、その鍵を見つめた。
何でもないかも、知れない。
でも、何でもなかったことにしたくない。
何でもなかったことにしたばかりに、
僕はこんなになってしまったんだから。
何だって良い、何だって良いんだ。
きっかけさえあれば。
僕は、それを自分から見いだせない。
これは、それを見抜くようだった。
もう居ない、あの人が僕にこんなものを送れるはずがなかった。
だけど、僕は、そう思いたかった。
その鍵は僕の誕生日に届いた。
それが、偶然でも、いい。
導かれるままに。
何気なく封筒の中を覗いてみると、文字が見えた。
荒くシャープな文字に、震える。
「HAPPYBIRTHDAY」流れるような筆記体。
間違いない。
渡されず、届かないまま、何年もこれはさまよったんだろうか。
それとも、竜崎は、どこかで。
僕は思わず、
「…今頃、今更ですよ」と、呟いた。
遠くで、竜崎が笑って、る。
届かない手紙はありません。
いつか、あなたは気付きますから。
「…」
頷く竜崎は、慈しむように僕を見て、消えた。
「竜崎、待っていてください」
そう決めた途端、身体が軽くなった。
手の平の鍵を見つめると、きらりと輝いてる。
それを握りしめる。
「…ありがとう」
いつも、いつだって。
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